私たち東京YMCAは、「青年」という言葉を生み出し、「たくましい子どもたち、家族の強い絆、支え合う地域社会」を築くための運動を展開する公益団体です。

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会員が語る「私とYMCA」

「寄付文化」の醸成を願って

東京YMCA名誉会員、元理事長/アメリカ ホンダ元社長
 茅野徹郎さん
名誉会員

【YMCAとの出会い】

YMCAとの出会いは高校生の時。かれこれ70年ほど前の、敗戦まもない頃のことでした。軍国主義から民主主義へと急激に変化した時代で、若者たちは非常に混乱して悩み、新しい価値観を見出そうとして共産主義に走ったり、教会に行ったりしました。そんな中で私も、地元の山梨県韮崎教会に行き、そこで山梨YMCAの主事に出会いました。

それをきっかけに私は、友人たちと一緒に母校の韮崎高校に「ハイスクールYMCA(=ハイY)」を設立しました。当時はクラブ活動のように、各地の高校に次々と「ハイY」が作られていて、みんなで聖書を読んだり、社会奉仕活動をしたり。また県内の高校でハイY連盟を作ってワークキャンプをしたことも楽しい思い出です。そうやって共に汗を流し、語り合ったことは、その後の私の生き方に大きな影響を与えてくれました。

【ICUへの進学】

高校3年生の時に受洗。ちょうどその頃、「国際基督教大学(ICU)」が創立されることを知りました。キリスト教理念に基づき、リベラルアーツを学べるICUにこそ進学したいと思いましたが未だオープンしていませんでしたので、いったん地元の国立大学に入学しました。そしてICUの設立を待って1期生として入学し直しました。




【ホンダへの入社、YMCAとの再会】

社会人になってからは忙しくて、また国内外で15回も転居したこともあって、YMCAからは遠ざかっていました。けれどもアメリカに赴任した1979年、全米YMCA同盟のプログラム(NYPUM=National Youth Program Using Minibike)にホンダが協力することとなり、YMCAと再会しました。その頃アメリカでは、ドロップアウトした青少年の更生のためにさまざまな取り組みがされていたのですが、中でもサンフランシスコのYMCAが始めたミニバイクを使ったプログラムが最も有効だったため、これをアメリカYMCA同盟が全米に展開することとし、ミニバイクを製造していた我が社にコンタクトしてきたのです。すでに前任者が協力を決めていたのですが、私はそれを引き継ぎ、相当数のミニバイクを寄贈するとともに安全運転の指導なども行ないました。

当時からアメリカでは、企業が社会貢献するのが常識でしたから、ホンダだけが特別なことをしたわけではありませんが、以後、チャリティーゴルフをしたり、全米の募金担当主事たちの勉強会に出席したりと、YMCAとの関係が深まっていきました。



【東京YMCAの会員として】

1990年に帰国してすぐに東京YMCAの会員になり、1991年から2012年まで、評議員、常議員、理事、理事長などを務めました。 ちょうど私が監事をしていた時、神田会館の売却問題が起きました。さまざまな意見がありましたが、あの頃の東京YMCAは財政的に底をついていたので、売却して再建すべきだと私は思いました。そして役員の舵取りと会員・スタッフの努力の結果、ここ2~3年財政的にボトムアウトしたのはご同慶の至りです。



【「山手学舎」の調整役として】

【山手学舎後援会の皆さんと共に】

常議員会議長をしていた時には、財政難だった学生寮「山手学舎」の廃止をめぐって意見が分かれ、ハンガーストライキなどが起きました。こういう時には色んな意見が飛び交いますが、私はもともと"現場主義"なので、関係者に直接会って話を聞こうと決め、まずは寮生と面談し、全員から話を聞いたんです。すると聞いていた話と全然違って、将来YMCAを支える会員になるだろうと期待されるすばらしい学生たちでした。これを単に財政問題として片付けてはいけない、山手学舎には意味がある。YMCAはこういう人たちを育てるべきだと思いました。それから私は理事会に、廃止の決定を変えたいと願い出ました。一度決定したことをひっくり返すのは大変ですが、皆さんご理解くださって、山手学舎を存続することになりました。財政難をサポートするために後援会を組織し、OBだけでなく一般会員にも協力を呼びかけて、皆で山手学舎を支えていくことになったのです。



【寄付文化の醸成のために】

【2017年会員大会で名誉会長として推挙】

2011年前後には、「ファンド&ディベロップメント(=FD)委員」となり、寄付金を集めるための勉強会などを行ないました。 YMCAのような団体や学校にとって、寄付を集めることは非常に大切な仕事です。私は母校の国際基督教大学やキープ協会で役員をしていた時にも、募金活動に力を入れてきましたが、YMCAももっと勉強して、いろんなアプローチを工夫していくべきだと思います。ただ待っているだけではダメです。特にキャンプや学校など、大勢のYMCAに関わった人たちとのつながりをもっと大事にして、支援者となってくれるよう育てていくべきです。

最近やっと日本でも「寄付」を理解する人が増えてきましたが、欧米並みになるためにはもっと努力が必要です。寄付にとって何より大切なことは、"誇りに思える寄付であること"です。寄付によって大事なプロジェクトに参画したんだと、本人も家族もそれを誇りに思えるような寄付を、もっと増やしていく必要があると思っています。



【名誉会員への推挙にあたり】

名誉会員に推挙いただいたことは本当に光栄なことです。ありがとうございます。
YMCAのボランティア活動もチャリティー運動も、その駆動力といいますかドライビング・フォースは、言うまでもなくキリスト教の精神です。今年は、マルティン・ルターが1517年にヴィツテンベルグ城教会に「95箇条の提題」を掲示して、いわゆる宗教改革が始まった500年の節目の年でもありますので、YMCAの"C"について、つまりイエス・キリストの教えられたことについてもう一度考えてみる良い機会ではないでしょうか。

聖書『マタイによる福音書』22章37節には「イエスは言われた。『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』」と述べられています。これが、われわれのすべての活動の原点です。また、ワイズメンズクラブの5つの信条の中の最初もこの言葉「自分を愛するように隣人を愛そう」です。



茅野徹郎さん(ちのてつろう)さん プロフィール

1931年生まれ。1979-89年 アメリカ ホンダ社長/ホンダノースアメリカ会長
1988-92年 本田技研工業㈱代表取締役専務
1992-96年 社団法人日米協会専務理事
1996-2007年 ICU財務理事
2010-2014年 公益財団法人キープ協会理事長



【取材後記】

取材後、ご活躍の秘訣をお伺いすると、
― 企業にいた頃はよく"エクスパティーズを大事にしよう"と言っていました。今やっている仕事をよく勉強して、その専門家として他に負けないくらいの仕事をする、ということです。 けれども私が社長になったのは、自分の努力ではありません。旧約聖書『伝道の書』には「すべてのことには時がある」と書いてありますが、私の場合もたまたまその「時」に巡り合っただけ。聖書には素晴らしいことが書いてありますね。― クリスチャンらしい、謙虚な答えが返ってきました。 

(文:広報室)